愛用レザーバッグ・財布のお手入れしてみませんか。
ワードローブを入れ替えたりクリーニングに出したりすることも多くなる、季節の変わり目。新しい季節を迎えるにあたり、お気に入りの革鞄や財布などの革製品もお手入れしてみませんか?
最近は靴磨きを趣味にされる方も増えているようですが、そんな経験者はもちろんのこと、はじめて革のバッグをお手入れをしようとされる方にも簡単でわかりやすい方法をご紹介。
アメリカ最大のプロ靴磨き職人集団「THE SHOESHINE GUILD」唯一の日本人メンバーにして「THE SHOESHINE GUILD JAPAN」の代表でもある大岡辰徳氏の監修のもと、革のバッグや財布の素材にあったお手入れ方法をまとめてみました。
そもそも何故、革のお手入れが必要なのか?
革製品は、乾燥することで革に含まれる油分が乾き、ヒビ割れが発生したり劣化を起こしてしまう素材です。お手入れをしない状態で使い続けたり、長い期間使用せずに放置したりするとさらに劣化が進み、傷や汚れもつきやすくなってしまいます。
人の肌も潤いがなければ、カサつくように革製品にもお手入れをして潤いを補ってあげる必要があるのです。
大岡氏「革のお手入れの基本は靴もレザーバッグも同じ。特に難しいことはなく、栄養補給とブラッシングがポイントです。さらに革の特性ごとに少しずつやり方を変えるだけで、より効果的にケアすることができます。革がひび割れたり汚れすぎたりすると元には戻せないので、使い始めの段階から適切にケアしておくことが、長くきれいに使うためには大事です。」
STEP 0. 用意するもの
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鞄、財布の中身はすべて取り出しておきます。
今回使用するメンテナンス製品はこちら
STEP 1. ブラッシング
強くこすらず、なでるようにさっとブラシでほこりをはらいます。ステッチ部分にはほこりが溜まりやすいので念入りにブラッシングしましょう。 ブラシは、柔らか過ぎず硬すぎず適度な弾力がある馬毛のものが扱いやすくおすすめです。
STEP 2. 栄養補給
革の栄養補給には人間のお肌と同じく、水分と油分が欠かせません。
特に乾燥している場合には水分をしっかりと補給し潤いを与え、その水分を閉じ込め保湿するための油脂を補給する必要があります。
ここで化粧水のような役割を果たすのが「デリケートクリーム」と言われる皮革用の栄養クリーム。他のクリームに比べ水分を多く含み革の繊維にしっかりと浸透します。
艶をあまり出したくない場合や応用編のように他のクリームを併用したい場合は【M. モウブレイ リッチデリケートクリーム】を、栄養補給とともに艶を出したい場合は【コロニル シュプリームデラックス】を使うのがお手軽で良いでしょう。
革の種類や状態によってはシミになったり色が濃く変化したりすることもあるため、まずは底部など目立たない箇所で試してから全体に使用してください。
柔らかい布や指にクリームを少量とり、優しくなでるように塗り伸ばしていきます。時間をかけすぎると浸透時間の差でムラになりやすいので、すばやく塗り伸ばし次のステップ「ブラッシング」に移ります。
STEP 3. ブラッシング
クリームを手早く塗ったら乾ききらないうちにブラシをかけ革に馴染ませます。シボの凹凸やステッチ部分はクリームが残りやすいので念入りにブラッシングしましょう。その後しばらく乾かしておくとクリームが浸透し定着します。
仕上げは全体にブラッシング。磨き上げると、自然な艶が出てきます。
ブラシが無い場合は【コロニル ポリッシングクロス】などの乾拭き用のクロスや、着古したTシャツなどの柔らかい布を使用しても構いません。
大岡氏によると、最後のブラッシングが実はとても重要で、仕上がりの美しさに差が出るポイントと言います。
この用途に最も適しているのが、馬毛ブラシ。クリームの栄養分やワックス成分をしっかりと革に馴染ませながら、表面をならして艶が出やすくする効果があります。
大きなバッグの場合は、小さな面積ごとにSTEP 2「栄養補給」とSTEP 3「ブラッシング」を繰り返し少しずつ全体を仕上げていくと、ムラにもなりにくく磨き忘れなどもしにくくなります。
なお、革靴のお手入れではクリームを馴染ませる際には豚毛ブラシを用います。革鞄や財布でも使えますが、靴に比べ風合いを重視した素材が多く、表面の物性によっては傷が付く可能性もあるため、あたりの柔らかい馬毛ブラシをお勧めします。
STEP 4. 防水スプレー
これはマストではありませんが、仕上げに防水スプレーを使用しておくと、急な雨にも安心ですし、汚れも付きにくくなります。
特に革のバッグは雨に濡れる面積が大きくシミになる可能性もありますので、天気予報次第では防水スプレーをしておいたほうが良いしょう。
30cmほど離して、1か所に集中しないように動かしながら全体にスプレーします。
防水スプレーの効果が持続するのはだいたい数週間程度と言われていますので、お手入れのたびにしておくとよいでしょう。
また、防水効果は完全に乾燥してから発揮されますので、雨の日のお出かけの際は直前ではなく前日に済ませておくことをお勧めします。
お手入れが必要なのはどんな時?
製品の種類や使用頻度、状態によるため正解はありませんが、一般的な目安としては以下のように考えられています。
靴なら「10回履いたら1回お手入れ」「月1回のお手入れ」など頻度または期間で考えるのが分かりやすいでしょう。
バッグや財布の場合は靴ほど過酷な環境で使用されることはないため「3-4か月に1回お手入れ」程度で十分ですが、よく使う鞄、特にハンドルやコーナーはダメージを受けやすいためお手入れの頻度を上げても良いでしょう。
また、乾燥が気になった時や雨に濡れた後などには、お手入れをしておくことをおすすめします。
まずはクリームひとつから試してみませんか?
色々な作業や道具が必要なように見えますが、実はクリームひとつあればひとまずお手入れを始めることは可能です。意外と簡単に、休日のコーヒータイムの合間にできてお気に入りの革製品を長くお使いいただくことができます。
ぜひ、この機会にお手入れを始めてみてはいかがでしょうか。
素材ごとにより詳しく、より深くお手入れをされたい方は「応用編」もあわせてご覧ください。
「革のお手入れ方法 ― 応用編」はこちらから
記事監修:
大岡辰徳 / THE SHOESHINE GUILD JAPAN代表
徳島県出身。西日本初の靴磨き専門店の責任者を経て、2018年単身渡米。アメリカ最大の靴磨き職人集団「THE SHOESHINE GUILD」のもとで修業しアメリカ流靴磨きを習得。唯一の日本人メンバーとなり、帰国後アメリカ国外では初となる「THE SHOESHINE GUILD」を冠した靴磨き専門店を大阪にオープン。
靴磨きの技術のみならずバイタリティ溢れる行動力にも注目が集まり、靴磨き職人として初めて中学校の教科書に掲載されるなど、活躍の場を多方面に拡げている。
Instagram: @the_shoeshineguild_japan
Web site: https://www.the-shoeshineguild-japan.com/