
美しい光沢と味わい深い経年変化で、世界中の革愛好家を虜にする希少素材コードバン。一方でデリケートな素材という印象も強く、取扱いは神経質になってしまいがち。
水分など弱点があるのも事実で気を付ける必要がありますが、コードバン自体は繊維密度が高く型崩れもしにくいと言われており意外と丈夫な素材なのです。
ここでは、コードバン製品を長く使う上でおさえておきたいお手入れのポイントを整理してみました。
コードバンの基本的なお手入れ
必要以上にクリームなどを塗りすぎると曇りの原因になるので、普段は乾拭きやブラッシング程度で十分です。さっと乾拭きできる【ペダック レザーグローブ】や柔らかく優しい【紗乃織 SANOHATAブラシ たてがみ】が最適です。
艶が落ちてきた、あるいは乾燥してきたと感じたらスムースレザーと同様にお手入れします。
詳しいお手入れ方法はこちらをご覧ください。
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コードバンに傷が付いた

コードバンの弱点のひとつと言われる「傷」。コードバン自体は決して極端に傷に弱いというわけではないのですが、その平滑な表面とあまりにも綺麗な光沢が少しの傷でも目立たせてしまうのです。
しかし、コードバンの繊維構造の性質上、実は浅い傷ならある程度修復することが可能です。ぜひ一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
もちろん、そのまま使い込んでエイジングとともに徐々に目立たなくなるのを待つというのも一つの方法です。
1. 汚れ落とし

スキンケアの前の洗顔と同じく、きれいな仕上がりにはまず下準備が大切。
はじめに傷に入り込んだ汚れを落としておきます。軽くブラッシングをしてほこりを落としたら【M.モウブレイ ステインクレンジングウォーター】をクロスや指にとり、なでるように汚れを拭き取ります。
2. クリームで繊維を柔らかく

【M.モウブレイ リッチデリケートクリーム】を傷とその周辺に少量塗ります。
コードバンの繊維を柔らかくほぐすことにより、次の作業を効果的に行えるようにします。
3. レザースティックで傷を押し込む

コードバンの繊維は本来ブラシのように繊維が垂直に林立したような構造ですが、グレージング加工という工程で繊維を強く寝かしつけ、表面をフラットにすることで深みのある光沢を与えています。
傷が付いた箇所はコードバンの繊維がささくれ立って乱れているような状態です。これを【アビィホーン レザースティック】で押して、もとの状態、つまり繊維が寝かしつけられている状態に矯正します。力をしっかりと入れてぐいぐいと圧力を加え押し当てていきます。根気よく押し続けていくと表面が徐々にフラットになり傷が目立ちにくくなります。
レザースティックが無い場合には「かっさ棒」と呼ばれるマッサージ用品や靴クリームの瓶底、スプーンなど表面が滑らかで硬いものを使って代用するという手段もあります。
4. クリームとブラッシングで艶出し

ある程度修復できたら【M.モウブレイ クリームナチュラーレ】で表面を整え油分補給と艶出しを。
クロスや指に少量とったクリームを薄く塗り伸ばし、馬毛ブラシで磨き上げて艶を回復させます。クリームは塗りすぎないように注意しましょう。塗りすぎた場合はすぐにクロスで拭き取り、念入りにブラッシングしてください。
しっかりと艶を出したい場合はこちらもあわせてご覧ください。

さすがに完全に消えるわけではありませんが、傷が深い箇所以外はかなり目立たなくなりました。
仕上げにクロスで乾拭きして磨き上げましょう。
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弱点を克服したコードバンもあります。
KUBERA9981では、傷に弱いというコードバンの弱点を克服した、オリジナルの型押しコードバンを開発しました。傷を気にせずに高級素材を普段使いできるという新しい価値を持つ、新しいコードバン。ぜひ一度お試しください。
型押しコードバンについてくわしくはこちらをご覧ください。
コードバンが水に濡れた

傷以上に気を遣うのは雨ではないでしょうか。コードバンの革靴を履かれる方は必ず天気予報をチェックすると言われるぐらい、水分はコードバンの最も苦手とするものです。
特にホーウィン社のシェルコードバンやKUBERA9981で使用しているアニリン染めコードバンは、風合いを損なう表面コーティングを施していないため水分を吸収しやすい性質があります。
万が一水に濡れてしまったり水膨れができてしまったら、以下の手順で修復を試みてください。
1. すぐに水分を拭き取る

濡れたまま放置すると「ブク」と呼ばれる水膨れの原因になるので、できるだけ早くタオルなどで水分を拭き取ります。こすらずに軽くたたくようにして水分を取り除きます。その後風通しの良いところで陰干しして乾燥させましょう。
水膨れができていないようなら通常のお手入れで栄養補給しておけば問題ありません。
2. クリーム塗布

水で濡れるとコードバンの繊維が起き上がった状態になり、これが水膨れとなって表面に凹凸が生じます。
水膨れができてしまった場合は【M.モウブレイ リッチデリケートクリーム】を水膨れとその周辺に塗り、あえて繊維を柔らかくすることで凹凸の差を目立たなくします。
3. 水膨れを押し込む

【アビィホーン レザースティック】でしっかりと圧を加えながら水膨れを押し込んでいきます。起き上がったコードバンの繊維を寝かしつけるグレージング加工を手で再現するイメージです。【ポリッシングクロス】などで水膨れを押し込むようにして強く乾拭きするのも有効です。
水膨れの程度によっては完全には元の状態に戻りませんが、ある程度目立たなくすることは可能です。
3. クリームとブラッシングで艶出し

最後に、ここまでの作業で乱れた革の表面をクリームでケアし光沢を復元します。
【M.モウブレイ クリームナチュラーレ】で油分とワックス成分を補給、仕上げは馬毛ブラシでしっかりと磨き上げます。
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コードバンの艶を出したい

コードバンの醍醐味の一つ、「艶」。
鏡面のように美しい光沢という他の素材にはないコードバン特有の魅力を、存分に堪能してみませんか。
1. 基本的なお手入れ

まずは基本的なお手入れをおこないます。【M.モウブレイ クリームナチュラーレ】を塗り馴染ませるところまでは同じです。
2. ブラッシング

その後仕上げのブラッシングを施しますが、ここではそのブラシを柔らかい【紗乃織 SANOHATAブラシ たてがみ】に変えてみましょう。
通常の馬毛ブラシは主に尻尾の毛を使いますが、こちらはたてがみの部分のみを使用したもの。たてがみの毛はとても柔らかいため、磨いた時のブラシ跡が付きにくくコードバンのお手入れに最適です。
3. ポイントは「水」

靴磨きをされる方にはお馴染みかもしれませんが、鏡面磨きの仕上げには少量の水を使います。同じように、【M.モウブレイ クリームナチュラーレ】に含まれるワックス成分を水でならしながら表面を滑らかにして定着させていきます。
霧吹きなどでブラシにさっと水をかけ軽く湿らせます。水分が多すぎた時は布や手などにとり調整します。湿ったブラシで素早くなでるように、様々な方向にブラシを走らせ水分が飛ぶまで磨き上げます。
4. 乾拭きで仕上げ

仕上げには【コロニル ポリッシングクロス】やネル生地などの布で乾拭きを。
ワンランク上のお手入れを目指すなら、良質な羊毛で優しく磨ける【ペダック レザーグローブ】がおすすめです。羊毛には保革効果のあるラノリンという油分が含まれているため乾拭きするだけで簡単にお手入れが可能。さらに、クリームでのケアの度に使えばクリームの成分が羊毛にも浸透し、手にはめて磨くだけで栄養補給から艶出しまで手軽にできます。これひとつで普段のお手軽ケアから艶出しの仕上げ磨きまで使える優れものです。
しっかりと磨き上げれば新品時同様あるいはそれ以上の艶を出すことができるかもしれません。
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革のダイヤモンドの輝きは永遠に
少し手がかかりますが、独特のエイジングと美しさは格別。牛革以上に「育て甲斐」のあるのがコードバンです。
長くお使いいただく間に傷や水といった思わぬトラブルに遭遇することもあるかもしれませんが、それさえも乗り越えたコードバンの圧倒的な風格もまた良いものです。
ぜひ自分だけのオリジナルに育て上げてみてください。
お手入れについてこちらの記事もあわせてご覧ください。