【プロフェッショナルに聞く】革のお手入れ方法 ― 応用編

バッグ・財布のお手入れ

素材ごとのポイントをおさえておけば、より効果的にお手入れできます。

今回は「基本編」でご紹介した内容をもとに、さらに素材の特性に応じたお手入れのコツをご紹介します。
「革のお手入れ方法 ― 基本編」はこちらから

靴磨きはもちろんのこと、バッグや財布、ウェアまで革製品全般についてお手入れのプロフェッショナルである「THE SHOESHINE GUILD JAPAN」代表の大岡辰徳氏によると、基本的な手順は同じで、革の状態や素材の特性によって気を付けるポイントがあるとのこと。

それでは、素材ごとに見てみましょう。

スムースレザー

スムースレザー

スムースレザーとは

表面が滑らかな革を「スムースレザー」と言います。革の質感をダイレクトに感じることができ、革の種類や仕上げによって様々な表情を見せます。シンプルで上品なアイテムとの相性が良く、ドレスシューズやビジネスバッグ、財布などに用いられます。

対象商品

スムースレザーのお手入れ

手順は基本編と同じですが、ここでは潤いの補給はもちろんのこと、より艶の出る仕上がりのためにクリームを2種類使用します。これは、革のコンディションを整えながら美しさも求める靴磨き職人ならではのアドバイス。まずはブラシでほこりを払います。ブラッシング後【M. モウブレイ リッチデリケートクリーム】を塗り【コロニル ポリッシングクロス】またはブラシで馴染ませるように磨きます。さらに【M. モウブレイ クリームナチュラーレ】を少量塗り伸ばし上質なオイルとワックスを補給します。

大岡氏「あらかじめデリケートクリームで水分を十分に浸透させておくことで、そのあとのクリームも浸透しやすく、また色ムラになりにくいのです。特に乾燥した革に油分の多いクリームをいきなり塗るとシミになることが多いので、デリケートクリームを先に馴染ませておくことがポイントです。」 仕上げに馬毛ブラシでしっかりと磨き上げることにより、余分なクリームを取り除き栄養分を革の繊維に馴染ませることができます。また、ブラッシングでならされた表面に乗ったワックス成分が磨かれることでさらに艶が出て美しく仕上がります。この仕上げのブラッシングは、靴を磨く際にも共通するとても重要な工程だと大岡氏は言います。

  1. ブラッシング → ほこり払い
  2. リッチデリケートクリーム → 水分、油分補給
  3. クリームナチュラーレ → 油分、ワックス成分補給
  4. ブラッシング → 浸透、艶出し

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シボ革

シボ革

シボ革とは

ここではシュリンクレザーなど表面が平滑ではなく皺のような独特の模様(シボ)がある革を指します。グレインレザーと呼ばれることもあります。シュリンクレザーとは薬品で収縮させシボを持たせた革のこと。シュリンクレザーの中には型押しあるいは薬品と型押しの併用によってシボを付けたものもあります。 他には、なめした革を「空打ち」と呼ばれる水を入れていないドラム内で回転させることによってシボを出す方法や手作業や機械で揉む方法もあります。ややカジュアルな印象ですが、傷や雨のシミが目立ちにくいという実用性からバッグや革靴など幅広い革製品に使われます。

対象商品

シボ革(シュリンクレザー)のお手入れ

スムースレザーと同じ方法でお手入れできますが、シボ革の場合クリームがシボの凹凸に入り込みやすいので、磨く時にはクロスよりもブラシが適しています。ワックス成分が含まれているクリームは白く残ることがありますので特に念入りにブラッシングをしましょう。
シボの皺が深い革はほこりも溜まりやすいので、シボ革のバッグは普段のメンテナンスとしてブラッシングをしておくのをおすすめします。

大岡氏「ブラシは馬毛のものが適度なコシがあり、ほこりをはらうのにもクリームを延ばすのにも使えて万能です。特にシボ革のお手入れでは必需品と言えます。靴磨きをされる方はすでにお持ちかもしれませんが、使うクリームが違いますのでできれば鞄用には違うブラシを用意したほうがいいでしょう。」 手ごろな価格のものでも十分ですが、中には木材や馬毛の品質など細部にまでこだわった製品もありますので、お好みでお選びください。

  1. ブラッシング → ほこり払い
  2. リッチデリケートクリーム → 水分、油分補給
  3. クリームナチュラーレ → 油分、ワックス成分補給
  4. ブラッシング → 油分なクリームの除去、浸透、艶出し

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ブライドルレザー

ブライドルレザー

ブライドルレザーとは

手綱やくつわなどの馬具を総称する英語「bridle(ブライドル)」。車におけるブレーキやハンドルといった重要保安部品である馬具に必要な高い耐久性を求めて開発された、英国発祥の堅牢な素材がブライドルレザーです。
英国の不安定な天候から革を保護するために、蜜蠟などの油脂をじっくりと浸透させ耐久性や防水性を高めた素材で、表面に浮き出たロウ「ブルーム」が特徴。

対象商品

ブライドルレザーのお手入れ

ブライドルレザーは蜜蠟などのワックス成分をすでに含んだ素材ですので、最初のうちは特に何もしなくても問題ありません。ただし、防水性があるとは言え水分が浸透してしまうとダメージを与えるので、雨に濡れた時はすぐにふき取り自然乾燥させましょう。
艶を出したい場合はブルームを馬毛ブラシで落とし磨き上げるだけで美しく艶があがります。
ブルームが落ち、艶がなくなってきたり、少し革が乾燥してきたと感じたら、スムースレザー同様にお手入れします。

【M. モウブレイ クリームナチュラーレ】のかわりに蜜蠟を含んだ【M. モウブレイ ビーズエイジングオイル】でよりしっとりと仕上げるのも良いでしょう。ブライドルレザーの防水性の維持に役立ちます。

  1. ブラッシング → ほこり払い、艶出し(使い始めはここまででOK)
  2. リッチデリケートクリーム → 水分、油分補給
  3. ビーズエイジングオイル → 油分、ワックス成分補給
  4. ブラッシング → 浸透、艶出し

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コードバン

コードバン

コードバンとは

農耕馬の臀部から僅かしか採れず、その希少性ゆえに革のダイヤモンドとも呼ばれるコードバン。馬革の一種ですが、厳密に言えば臀部の厚い皮の中に存在する2mm程度の「コードバン層」と呼ばれるコラーゲン繊維層を削り出したものです。日本、アメリカ、イタリア、スペインなどで生産されており、アメリカのホーウィン社や日本の新喜皮革がよく知られたタンナーでしょう。
毛穴が無く美しい光沢を湛えた滑らか表面が特徴的で、使うほどに艶を増す経年変化も魅力です。
傷が目立ちやすく水分に弱いためデリケートと思われがちですが、繊維密度が高く意外と丈夫な素材で、お手入れはスムースレザー同様で問題ありません。

対象商品

コードバンのお手入れ

【M. モウブレイ リッチデリケートクリーム】を少量塗りブラッシング。次のクリームが浸透しやすくしておきます。【M. モウブレイ クリームナチュラーレ】塗りしっかりとブラシをかけ油分を行き渡らせます。
クリームは塗りすぎないように注意しましょう。また、クリームを塗ると光沢が無くなり曇ったように見えますが、ブラシで磨き馴染ませることでコードバン特有の美しい光沢がすぐに戻ります。
クリームが馴染んだら全体をブラッシング。ワックス成分をならして艶が出るまでしっかり磨いて仕上げます。

通常の馬毛ブラシでも問題ありませんが、最後の仕上げのブラッシングには馬のたてがみ部分を使用した柔らかいブラシであれば、あたりが優しくより艶やかに仕上げることができます。
コードバンのお手入れやトラブルシューティングについて、詳しくはこちらでもご紹介しております。あわせてご覧ください。

  1. ブラッシング → ほこり払い
  2. リッチデリケートクリーム → 水分、油分補給
  3. クリームナチュラーレ → 油分、ワックス成分補給
  4. ブラッシング → 浸透、艶出し

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エキゾチックレザー

エキゾチックレザー

エキゾチックレザーとは

クロコダイルや象革など、個性的な表情を持つ希少革をエキゾチックレザーと総称しますが、その個性は素材によってまさに千差万別。
他にはない唯一無二の存在感が魅力です。 象などの大型の動物を除き、エイ革や鮫革などは大判のものであっても牛革などに比べれば格段に小さく、そのため財布や革小物に用いられることが一般的です。

対象商品

エキゾチックレザーのお手入れ

鮫革やエイ革、象革など大きな凹凸やシボのある素材はブラッシングでほこりをしっかりと払っておきます。お手入れ自体は基本的にはスムースレザーと同じように可能なのですが、エキゾチックレザーの場合はできるだけ風合いを変えず色ムラなどのリスクを避けたほうが良いでしょう。ブラッシングのあとはデリケートクリームの成分をスプレーできる【デリケートスプレー】などがおすすめです。スプレー後5分ほど乾燥させて【コロニル ポリッシングクロス】などで乾拭きしてください。

特に表面を少し毛羽立たせたヌバックやスエードの場合は、クリーム類を塗ると起毛させた革が寝てしまうため素材感が変わってしまいますので、あえてする場合を除いておすすめしません。
エキゾチックレザー用の防水スプレーで仕上げておけば汚れも付きにくく、素材特有の自然な艶を維持することができます。スプレー後、乾燥したらクロスまたは馬毛ブラシで乾拭きしておきましょう。
なお、KUBERA9981の上記シリーズの内装に使用されているカーフは、スムースレザーと同じ要領でお手入れできます。

  1. ブラッシング → ほこり払い
  2. デリケートスプレー → 水分、油分補給
  3. エキゾチックスプレー → 艶出し、防水・防汚

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ケア用品

愛用の革製品をより長くお使いいただくために

素材別のお手入れ方法、いかがでしたでしょうか。 お手入れの基本的な考え方は共通なのですが、ほんの少しだけ素材の特性にあった方法を採り入れるとより満足度の高い仕上がりになり、さらに愛着が増すことでしょう。
お手元にあるお気に入りの革製品も、しばらく使っていないバッグも、まずはブラッシングから始めてみませんか?

基本的なお手入れをおさらいしたい方は、基本編をご覧ください。
「革のお手入れ方法 ― 基本編」はこちらから

ケア用品

記事監修:
大岡辰徳 / THE SHOESHINE GUILD JAPAN代表
徳島県出身。西日本初の靴磨き専門店の責任者を経て、2018年単身渡米。アメリカ最大の靴磨き職人集団「THE SHOESHINE GUILD」のもとで修業しアメリカ流靴磨きを習得。唯一の日本人メンバーとなり、帰国後アメリカ国外では初となる「THE SHOESHINE GUILD」を冠した靴磨き専門店を大阪にオープン。
靴磨きの技術のみならずバイタリティ溢れる行動力にも注目が集まり、靴磨き職人として初めて中学校の教科書に掲載されるなど、活躍の場を多方面に拡げている。

Instagram: @the_shoeshineguild_japan
Web site: https://www.the-shoeshineguild-japan.com/